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2006年1月 3日 (火)

現場と乖離したマスコミ研究

NHKの受信料を払っている方に、一つお尋ねしたいことがある。

「あなたの払っている受信料、その一部が放送エリアの狭い民放ラジオ(いわゆるコミュニティFM)への補助金に使われるとしたら、受信料を支払いますか?」

えっ?と思われる方は多いだろう。実は、マスコミ研究者でこのような制度の必要性をしきりに強調している人がいるのだ。コミュニティ放送は地域の情報伝達のミニマムアクセスを担っているのだから、NHKが放送料収入の一部をコミュニティ放送の支援に回すのは当然という論理だ。「諸外国でも実例がある」と力説する先生もいる。

原則市町村単位で放送エリアが決められる、コミュニティ放送の経営がどこも苦しいのは想像に難くない。放送エリアが狭く限定されてしまうことで、放送局の収入の大半を占める広告(CM)料の単価も安くなり、スポンサーが限定されることで広告料のパイ自体も小さくなってしまうからだ。経営が順調なのは、かの木村太郎氏が社長を務める神奈川県葉山のビーチFMや岡山県のFMくらしきなどごく一部といわれる。

しかしだ、経営が厳しい→NHK受信料の一部を配分という図式にどうしてなるのだろうか。コミュニティ放送はあくまで民間放送局。広告料収入で運営していくのが基本だ。現実的には地元財界がさまざまな形で支援し、行政も広報放送の広告料や緊急災害放送の見返り費用で援助するのが一般的だし、あるべき姿である。コミュニティ放送はあくまで「おらが町の放送」だから、地域の自助努力で経営を支えるのが基本で、画一的な公的資金投入にはなじまない。また画一的な公的資金が投入されることで、内容のいい加減な放送免許を申請が相次いだりするような、経営陣のモラルハザードを招く可能性もある。何より、今のNHKの体質を見れば「放送版ヨミネット」にすり替えられる危険性も否定できない。コミュニティ放送への公的資金投入を主張される大学の先生は、こういうデメリットに思いを致さないのだろうか。緊急災害放送と表裏一体の24時間放送を支えているのは、実は通信衛星経由のJ-WAVE番組配信ということも、恐らくこういった先生方はご存じないのだろう。

以前、「地域メディアと選挙報道」と題したある研究者の研究発表に参加したことがある。ある県の地域メディアの選挙報道姿勢を分析したものだったのだが、その分析要素の中に「メディアの資本構成」が抜けていたのを鋭く指摘したことがある。地方のケーブルテレビは何らかの形で行政の資本が入っていることが多いし、また新聞社の場合は国会議員や県議がオーナーを務めている例も目立つ。そういう資本構成に選挙報道への姿勢や取り組みが左右されることは現場にいる人間ならすぐ分かるのだが、ずっと研究室で暮らしてきた人にはそういう視点がないようだ。

最近のメディアを取り巻く状況を見るにつけ、現場とメディア研究者が互いに研究成果や問題点をフィードバックしていくことが欠かせないと思うのだが、実態はお寒い限りであるようだ。

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